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濁流の中 つかんだ手。

2011 - 06/14 [Tue] - 11:56

読売新聞 2011(平成23)年4月12日付 朝刊

濁流の中つかんだ手

幼なじみ 屋根に腹ばい漂流

「1人では助からない」

yomi13

 暗闇の中、シュルシュルと音をたてて、ホースのちぎれたガスボンベが、水面を不気味にはい回っていた。辺りはガス臭く、がれきにぶつかると爆発音が響く。約15㍍離れた民家から大きな炎があがり、熱風を感じた。
 3月11日午後6時頃、宮城県名取市。幼なじみの高橋幸二さん(25)と橋浦彩(たみ)(26)さんは、漁船の上で、水浸しになった身体を震わせていた。橋浦さんは「寒くて、怖くて、声も出なかった」。海のように広がる黒い水。その下は海岸線から約2.5㌔離れた平野部だった。



 午後2時46分。2人は隣の岩沼市の飲食店で昼食をとっていた。
 大きな揺れに、慌てて車に乗り込み、名取に戻った。海岸にほど近い道路を走ると、拡声機で津波警報を伝える消防団員の姿が見えた。ただ、歩道では携帯電話を手に座り込む人や、立ち話する人もいる。「のんびりしているな」高橋さんは思った。海岸から約1㌔離れた閖上(ゆりあげ)地区の橋浦さん宅に立ち寄ると、家族はすでに避難しており、壁から落ちそうになっていた祖父母の遺影を2人で直していた。
 3時52分。「ゴー」という地鳴りが聞こえた。「2階に上がれ!」高橋さんが叫んだ。階段をかけ上った橋浦さんが海に面した窓から見たのは、「近所の家の屋根より高い灰色の波」だった。2人が橋浦さんの自室に入ったとたん、轟音とともに部屋がつぶれ、屋根が覆いかぶさった。必死に隙間から抜けだし、屋根の上で腹ばいになった。
 想像を絶する光景だった。家から切り離された屋根は、激流の中を内陸部へ向かう。周りでは家と家がぶつかり合い、数㍍先のがれきの上にいた女性が、助けを求めてきたが、どうすることもできないまま見失った。



 2人はそれぞれの人生の転機にあった。
 高橋さんは介護関係の仕事を辞め、大学で取った教員免許を生かして、4月から県内の公立高校の講師として働く予定だった。
 橋浦さんは数年前、仲間とともにバスケットボールの社会人クラブチームを設立。今年2月には県大会で3位に入り、軌道に乗ったところだった。
 垂れ下がった電線が何度も頭上をかすめる。その1本が高橋さんの顔に当たり、濁流の中に放り出された。「ここで1人になったら、絶対に助からない」。橋浦さんが、かろうじてその右手をつかみ、高橋さんは再び屋根にはい上がった。
 がれきに引っかかって止まっていた漁船のそばを通る瞬間、2人は転がるように甲板に飛び込んだ。
 ぐったりする橋浦さんの背中をさすりながら、高橋さんは、大声で歌うことで正気を保った。



 午後6時半頃。腰まで水につかりながら歩く若者2人を見て、水が引いているのに気づいた。近くの民家に助けを求め、貸してもらった服に着替えると、橋浦さんは、猛烈な痛みを左手に感じた。手の甲の傷は骨が見えるほど深かった。
 被災後は2人とも、仙台市内で自分の家族と生活している。
 高橋さんは今もよく眠れず、2~3分おきに目が覚めるため、カウンセリングを受けた。講師の職に就くかどうか迷い始めている。
 橋浦さんは、街が徐々に復興に向かうのを見て、気持ちがついていけないと感じている。「私たちは運良く助かった。でも、多くの人が、あれほどの恐怖を味わいながら亡くなった。それを考えると、胸が張り裂けそうになるんです」。その言葉に、高橋さんがうなずいた。
(溝田拓士)(菅野靖撮影)

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